
朝令暮改はベンチャーの常識
社会人1年目。まずは研修。チームに分かれてSDカードを飛び込みで売るというサポート営業とは程遠い、ガチ営業。結果出なけりゃ講師がブチギレ、喧々囂々の修羅場。
次の瞬間には鬼講師が涙を流すという、なんともカオスな状況。今思えば大事な要素の詰まった研修でしたが、若人たちには地獄でした。
研修が終わる頃には40人くらいいた新卒も半分以下になってました。
無事やりきっていざ配属。よーし、お客様の力になるぞー!と心機一転、が。事業部総力を上げて新規事業を立ち上げるって。えーーーー?
もちろん、新規開拓から。それでも一人前に仕事ができると思えば楽しみなものだったのですが、これがまたハードル。役員の商談ロープレをパスしなければ新規商談に出れない。ここでもたもたしてると1円も積み上がらない。
しばらくはテレアポしながらロープレの日々。
そうそう毎日役員の時間を割くこともできないので上長に付き合ってもらう。
これがまた超、申し訳ない。上長だって忙しい。末端ながらに教育コストの重みを垣間見ました。
と、まあ、皆様のお力で徐々に合格者がでて、商談に行けるようになるのですが、この頃には役員含む凄腕の役職者方がすでにビジネスの面を作り上げており、新規営業チームを数人残し、他は代理店推進にリソースを割くことに。
そしてついに待ち望んだサポート営業の開始です。
事業の内容はある程度の守秘は守らないといけないのであれですが、要は販売委託ですね。
その販売をアシストして代理店さんの売上を向上させることが目的のチームです。販売委託なので、代理店さんが儲かれば、必然的に自社も儲かります。
販売網は全国区。北は北海道、南は沖縄まで。
代理店さんの今ある売上をいかに伸ばせるかの戦いになってきます。この会社に属しての気付きや収穫などはプロフィールにつらつら書かせていただいたので、今回はせっかくなので、実際にお客さんの実績を向上させた勝ちパターンなんかを紹介しようと思います。
現場を知り、情報を得る
これが一番でした。新規営業でも事前に先方の状況や動向などをリサーチするように、フォロー営業でも同じ事が言えます。
つまり敵を知る(敵じゃないんだけど)ところからはじめました。
しばらくフォロー営業をやっていると、代理店さんが稼働、つまり活性化する要因は大きく2つに大別されていたことがわかりました。
- トップダウンで動く
- 現場の判断で動く
シンプルにこの二択です。なんで2つ要因があるのに勝ちパターンは1つしか提示されてないのか?
これは1の要因は誰でもわかってるからです。言ってしまえば勝ちパターンでもなんでも無く、ただトップとの交渉を超えれば良いだけです。
むしろ、最初の商談でしっかりグリップできていれば通常は初動を少しテコ入れするだけで動きます。
それでも動かなければ然るべき役職者と同行して話をまとめれば大概解決します。
意外と出来ないのが2。通常、ビジネスパートナーに動いてもらうには決済者の承認からのトップダウンが当たり前だ(と思い込んでる)からです。
こちらから現場に何言ったって、「いや、社長になにも言われてないから勝手なこと出来ないよ」で終わる(と思い込んでる)ので、そこになかなか踏み出せないんですよね。
そうなんです、思い込んでるだけでホントは解決の鍵が現場に落ちていることも珍しく有りません。
当時サポートを開始して経験の無いChagamiは現場にはいくものの、販促POPや獲得トークを展開して、じゃあよろしくおねがいします。で終わってました。
愚物です。メールで終わる内容です。顔合わせるのは多少効果的ですが、これじゃ顔合わせても面白くもなんとも無いですね。
何が問題で販売が出来てないのか聞いてみても
「いやーお年寄りのお客さんばっかりで」
「社長が特に何も言ってないから勝手はできなくて」
「忙しくて提案してる暇なくて」
こんなのばっかです。同じ法人の他の店舗は販売できているのに。です。結局初動を逃したところは運用に組み込まれてないから待ってたところで一生変わりません。
もう、言い訳なんです。全部。動くっていう選択肢が彼らの中に無いんです。
じゃあどうすんの?ってなった時に、普通は決済者にチクリいれますよね。笑
でも考えてみてください。決済者からは既に一回、Goが出ている状況です。もう一度社長経由で通達出しても、動くとは思えません。なにより社長だって暇じゃねーのです。
選択肢は1つ。直接現場を動かす事。
現場の動かし方ですが、これはまた決まったセオリーはありませんが、共通して言えることはまず
現場レベルで交流を深めて好きになってもらう
これが不可欠でした。そりゃそうです。仲良くなければ誰も本音なんか話しません。勝ちパターンとして現場をしり、情報を得るなんて偉そうに書きましたが、つまるところ仲良くなって腹割って話そうぜ!って事です。
これをするために一日中店舗をまわりました。ビジネスにおいて先方に伺う場合、良い話の1つや2つ持っていくのが常識と思われるかもしれませんが、僕が持っていったのはリポビタンD。これだけ。そう、特に用事もないのに伺います。
伺ってなお、世間話。会社への報告の便宜上、仕事の話も10分くらいは、、、という具合でした。日報書くのが大変だった記憶があります。笑
休みの日も近くに行けば顔だします。なぜか先方の全体会議にも出席してます。なんならプライベートでも飲みに行ったりします。
社長同士の付き合いですと、飲みにいくのは仕事だかプライベートだか線引が難しいですが、1スタッフにとって取引先とプライベートでのみにいくなんて時間外労働みたいなもんです。
でも、これが自然に発生するようになれば、あるとき「お世話になってまーす」が「お疲れ様でーす」に変わります。「Chagamiさん夜暇?飲み行こうよ」と、まるで友達です。
仲良くなる経路はコレ以外にも様々ですが、取引先という感覚を極限まで取っ払いたくてこういう動きをしました。
結果、どこの店舗にいつ行っても、僕を知らない人がいないくらい、自分を浸透させることで、みんなから意見をいただけるようになりました。実に泥臭いですね。
そうなってから改めて仕事の話をすると、”ぶっちゃけ”が出てきます。お互いに。
あれほど断り文句のオンパレードだったのが
「実は他の商材の方が単価高いからそっち優先するように社長に言われてる」
「業務負荷が高いから残業に発展してしまう」
「やったところで給料一緒だしって考えのスタッフが多くて」
そんな生々しい、先方の社長からも得ることのない要因がポロポロ出てきます。
気付けなくてごめんなさい、さっさと解消します!ってことで、あとは要因ごとに企画を練り、実行するだけです。それでだめなら、まだ交流がたりません。笑
今、3つほど要因を挙げましたが、実際に行った施策を紹介します。成果報酬的な考え方なのでリスクはほとんど無い組み方です。
業界によっては当たり前ですが、別の業界だと「なるほど」になることもあるかと思いますので、ご興味ある方は是非ご参考ください。
1.他社商材の優位を解消
「実は他の商材の方が単価高いからそっち優先するように社長に言われてる」
このケースです。社長さんが仰ることは最もですし、店舗ごとにノルマが付与されているケースではこういったことが起こりやすく、店長さんが決済を持ってる場合は、当然達成に向けて商材の取捨選択を行います。
単価、つまり利益がネックになっているので、物販なんかだと売価を下げる事で対応しますよね。もちろん、単価を下げた分絶対的な利益は減るので、双方按分するなりメーカー側が飲み込んだりする必要が生じます。
ただ、安易に売価を下げたり報酬を上げたりすると歯止めが効かなくなります。
そこで、自社の利益と吐き出しを天秤にかけながら、ボリュームで握ります。
考え方はシンプルで、分かりやすくアフィリエイト方式で考えてみましょう。
例えば自社の商材を獲得してくれたら1件800円出しますよと仮定します。一方他社商材の単価が1000円としましょう。
かつ、自社の利益が1件800円だと仮定します。つまり、1件あたり自社には800円のバッファがあるわけです。
極端な話、もともと0件の店舗が動き出すので799円吐き出しても1件あたり1円の利益が上がります。
ただ、単価をいじる=社内調整が必須という前提なので、そうは問屋(自社)が卸しません。会社も代理店様も納得のいくバランスで組む必要があります。
基本的には他社に単価負けしてる場合はイーブンまで合わせてくれる傾向にありましたが、僕は下記のような条件を提示しました。
- 3件獲得:1000円
- 6件以上獲得:1100円
- 10件以上獲得:1200円
- 3ヶ月以内に月間10件を達成したら次月より1件目から単価1100円を保証します
スタッフさん3名、来客数が約80程度の店舗を想定します。当時事業全体で来客数に対する獲得率が50%を超えていたので、どれも充分実現可能な数字です。
まずは1人1件、全員で獲りにいきましょう。来月は1人2件頑張りましょう。慣れてきたら精度上げてきましょう。といった具合です。
これならできそうだなという数字で提示し、達成し、提案を恒常化してもらうためです。さしずめ達成前提のキャンペーンなのです。
このケースは利益が第一優先なので、社長も店長も当然10件以上を狙いに来ます。これを達成したときの他社と利益さは歴然です。達成したら以後の単価も保証されるため、優先獲得する動機にもなります。
悪い言い方をすれば「やるなら出すしやらないなら出さないよ」という感じです。
こういうスタンスであれば社内交渉も実に通りやすく、施策を実行しやすくなります。
2.業務負荷を解消
「業務負荷が高いから残業に発展してしまう」
このパターンはとてもシンプルで、できる範囲で一部の業務を手伝います。逆に言えば、会社として手伝うことは出来ないので個人で頑張る他ないのが辛いところですが、店舗仕事の場合は接客が第一優先なので事務処理が大体閉店後になります。
集中してやれば30分で終わることも接客をしながらだと本当に難しい。基本、店舗に専属事務員なんていません。全員で接客して全員で事務処理します。
例えば週に一度、1時間だけ手伝いにいくだけで解消することもあります。
中には現場の実態を知らずに「ノー残業!」なんて圧をかける経営者もいなくはないので(悪気は無いんですよ)、そこは間に入って社長さんに交渉し、専任の事務従事者をパートでもいいから置くなり、アウトソーシングを使ってみるなり、提案したケースもありました。
ここで割と重要なのは、業務量の低減もそうですが、スタッフの心の余裕ができること。余計な不安や心配がなければ接客に集中できて精度もあがるし、やる気もでます。
施策とは呼べないかも知れませんが、これも実際に実績を上げた一例です。
3.業務負荷を解消
「やったところで給料一緒だしって考えのスタッフが多くて」
最後はこのパターンです。簡単にいうと、「スタッフのやる気がない」ですね。アルバイトが多い店舗なんかですと比較的発生しやすいです。
これはもう、やらない要因というか、具体的な原因ですらないので正直一番悩みました。
やれない訳ではなく、やらないんです。動機づけから考えなければなりませんでした。
ナポレオンが言ってますね、人を動かすのは金と恐怖だと。金をばらまくことなんて出来ません。恐怖で統制なんてもってのほかです。せっかく仲良くなったのに一発で人格疑われます。
そこで選択肢としてとったのがインナーキャンペーン。販売者にたいして直接商品や賞金を授与するイメージです。
基本的に還元施策は、利益の範囲内でやるべきですので、予算の壁がそびえ立ちます。
1の単価解消で触れた前提とすると、1件あたり800円のバッファを持ち、獲得率50%で40件。半分つぎ込んだところで総額16000円也。これで何が出来ようか。
本来のインナーキャンペーンなら代理店さんの利益の範囲内で社内還元してもらうのがセオリーですが
「やりませんか?」
「え?やだよー」
「最初の3ヶ月だけ利益削ってでも癖付けして毎月獲得できる土台が整えばうんたらかんたら」
「え?やだよー」
大体こうなります。多分、社長さんも今までの経験で、ウチのスタッフは動かんものは動かんのだ!がっはっはー!な状態なんだと思います。
であれば、許された予算でなんとかするしかありません。しかも40件獲得なんてほぼアッパー値。いきなり16000円の予算が発生するとは到底思えません。
選択肢としては「見せ方」か「予算の確保」。というわけで、見せ方特化で舵を切りました。
評判がよく、実績も上がったものが以下でした。
- 実績に応じた商品券を最優秀者が総取り
- うまい棒1000本(これは意外でした)
まず前者ですが、予算枠を底上げするためにキャンペーン期間を3ヶ月程度とります。同程度のボリュームの店舗の再稼働が成功した場合、ほとんどのケースで2ヶ月目には全体獲得率の平均値、またはそれ以上まで伸びていたデータが山程有るためです。
つまり2ヶ月目には40件を見込める想定です。初月が5とかで終わっても、3ヶ月トータルで85。自社バッファの半分でも予算は85件✕400円=34,000円(分の商品券)
総取りの金額としては充分魅力的なものになります。また、皆が頑張った分だけ賞金も上がります。こういったキャンペーンを行った場合の結果は往々にして0or100ですので、最低ラダーを設ける必要もほとんどないです。
そして晴れて稼働し、トップ賞がA君だっとします。これもやって初めてわかったのですが、大体はここで獲得した商品券でみんなで飲みに行ってます。僕も誘って頂いてます。そのまま懐に入れる人は稀でした。
達成会みたいに、皆でやった感を出せるのも良いところですね。
最後に「うまい棒1000本」ですが、これは予算10000円もあれば実現できます。
1000本ともなるとでっかいダンボールにドン!ドン!ドン!です(笑
単純に見た目のインパクトがすごいのでキャンペーン感がでますし、みんなのおやつになるので女性スタッフが多い場合は意外と喜ばれます。
つまり10000円÷400円=25件もあれば充分予算は足りるので、1ヶ月のスプリットでも全然いけます。純粋に25件、いくかいかないかです。
難点はスペースとるので乱発出来ないという部分ですが、キャンペーンはそもそも起爆剤としての活用や繁忙期の後押しなので、もともと乱用するものではありませんので大丈夫です。
という具合に例に上げたのはたった3つですが、直接現場のスタッフさんに通し込める施策は非常に効果的であり、盛り上がります。以後も語り草になったりするレベルで記憶に残るので、現場とのお近づきの印にこういった企画を試してみてはいかがでしょうか?